失業手当は、失業した方が安心して生活を送りながら、1日でも早く再就職するための、経済的な支援として給付されます。
ただし、失業手当は誰でも受給できるわけではなく、一定の要件を満たさなければならないため、注意が必要です。
そこで今回は、失業手当の受給要件や給付日数、計算方法について解説します。
※「失業手当」は、正式には「基本手当(失業等給付)」といいますが、わかりやすくお伝えするため、この記事では「失業手当」という表現で統一しています。また、この記事は、令和3年7月1日現在の情報に基づいて作成しています。
失業手当の受給要件と給付日数
失業手当は、雇用保険の被保険者の方が、定年や自己都合、解雇などの理由により離職した際に、給付されるものです。
失業手当の受給要件として、以下の2点を満たす必要があります。
(1)ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に転職活動をしているにもかかわらず、就職できていない「失業状態」にあること。
※すなわち、以下のようなケースは対象外となります。
- 病気や怪我により、就職が困難な場合
- 妊娠、出産、育児により、就職が困難な場合
- 定年退職などにより、一定期間の休養を考えている場合
- 退職して、すぐに転職する予定がある場合 など
(2)離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算12か月(=1年)以上あること。
ただし、倒産・解雇など会社都合で離職した場合や、配偶者の転勤など自分の意思に反する正当な理由で離職した場合は、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算6か月以上あればよい。
上記2つの要件を満たしている方は、離職後にハローワークでの手続きをすることで、失業手当の受給が可能になります。
ただし、受給資格が決定した日から7日間は「待期期間」と呼ばれ、どのようなケースであっても、失業手当を受給できません。
また、自己都合により離職した場合、待期期間が経過した後、3か月間の給付制限期間があるので注意しましょう。
失業手当の計算方法
失業手当の受給額は、離職前の50~80%ほどが目安になり、給与水準が低かった方ほど給付率が高くなるという点が特徴です。
また、失業手当の給付日数は、離職時の年齢や、雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって、90~360日の間で決定されます。
原則、失業手当の日額は、以下の計算式で求められます。
失業手当日額 = 賃金日額(退職前6か月間の賃金合計÷180日) × 給付率(50~80%)
給付率については、賃金日額の程度によって、以下のとおり定められています。
賃金日額と給付率
(A)2,574円以上5,030円未満・・・80%
(B)5,030円以上12,390円未満・・・50~80%
(C)12,390円以上・・・50%
例えば、「大卒・正職員として5年勤務後、自己都合により退職した(離職前の賃金は月30万円)」というケースで考えてみましょう。
まず、賃金日額は月300,000円 × 6か月 ÷ 180日=10,000円です。
上記(A)~(C)のうち、(B)5,030円以上12,390円未満に当てはまるので、給付率は50~80%となります。
すなわち、失業手当日額=10,000円 × 50~80%=5,000~8,000円です。
ただし、失業手当日額には、離職時の年齢によって、以下のとおり上限が定められています。
離職時の年齢と失業手当日額の上限
(A)29歳以下・・・6,850円
(B)30~44歳・・・7,605円
(C)45~59歳・・・8,370円
(D)60~64歳・・・7,186円
今回想定しているケースの場合は、(A)に該当するため、失業手当日額は、5,000~6,850円となるでしょう。
最後に、給付日数について、自己都合による離職の場合は、年齢にかかわらず以下のとおりです。
被保険者であった期間と給付日数:自己都合による離職の場合
(A)1年以上10年未満・・・90日
(B)10年以上20年未満・・・120日
(C)20年以上・・・150日
よって、正職員として5年勤務した今回のケースでは(A)の90日に該当するので、日額5,000~6,850円を、90日間にわたり受給できることになります。
生活維持のため失業手当を利用しよう
収入がない失業期間は、生活費について不安が生じる方も多いでしょう。
生活を維持しながら、安心して転職活動に励むためにも、失業手当の制度をきちんと理解・利用してください。
受給要件に当てはまる方は、最寄りのハローワークにて、相談・手続きを進めましょう。