失業手当を受給するためには、ハローワークに離職票を提出する必要があります。
しかし、離職票に記載される「賃金額」に賞与などが含まれていないことについて、疑問に思う方もいるでしょう。
そこで今回は、失業手当における「賃金」の考え方について解説します。
※「失業手当」は正式には「基本手当(失業等給付)」といいますが、この記事では「失業手当」という表現で統一しています。
また、この記事は令和3年8月1日現在の情報に基づいて作成しています。
失業手当の受給に必要な書類
まずは、失業手当を受給するために必要な書類を確認しましょう。
必要書類
- 離職票・1
- 離職票・2
- 次のAおよびBの確認書類
- A:個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票の写しのいずれか
- B:身元(実在)確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、官公署が発行した写真付きの身分証明書・資格証明書、住民基本台帳カードなど)
なお、Bの確認書類がない場合は、次のア~ウのうち異なる2種類
ア:国民健康保険被保険者証または健康保険被保険者証
イ:住民票記載事項証明書(住民票の写しまたは印鑑証明書)
ウ:児童扶養手当証書など
- 印鑑(スタンプ印不可)
- 写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)またはマイナンバーカード
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
1と2の離職票は、いずれも勤務していた事業所から被保険者に交付されます。
離職票に記載される「賃金額」
前述した必要書類の一つである離職票には「賃金額」が記載されています。
雇用保険料は、給与や賞与など労働の対価として事業主が被保険者に支払うすべてのものから差し引かれているため、「賃金額にはその全額が記載されるのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、失業手当の算定の基礎となる「賃金額」は原則給与として定期的に(毎月)支払われるものが対象となり、「臨時に支払われる賃金」および「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」は対象外となっています。
この「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」には、年間を通じての支給回数が3回以下となる賞与等が該当します。
そのため、雇用保険料は賞与等からも徴収されているものの、失業手当の「賃金額」には反映されないという状況が生じるのです。
例えば1年間の給与が240万円+賞与が60万のAさんの保険料と、給与300万のみのBさんの雇用保険料は同じであるのにもかかわらず、失業手当の額はBさんのほうが多くなります。
失業手当における賞与の考え方
昭和60年までは、毎月の給与だけでなく賞与等も含めて失業手当の額を算定していました。
しかし、以下の点などが問題視され賞与等は失業手当の算定の対象から除外されることになったのです。
- 失業手当の額(離職前の給与のおおよそ5~8割)が、賞与等を含めることにより、手取り給与や額面給与と比べて割高になってしまう
- 賞与等は給与と比べて企業規模や業種によって差が大きいため、格差が生じてしまう
- 離職期間が賞与等の支払期間を含むか否かによって、失業手当の額が大きく異なってしまう
- 高額の賞与等をもらってすぐに退職した場合、割高な失業手当を受けとってしまう
一方で、そもそも雇用保険料を賞与等から徴収しなければ良いのかというと、そうではありません。
仮に賞与等を雇用保険料の徴収対象から除外すると、それまで賞与等から調達していた保険料を給与から調達することになり、相当の保険料率の引き上げが必要になります。
すると、全体に占める賞与の割合が低いと考えられる低所得者の方にとっては、実質的に保険料の負担が大きくなるでしょう。
また、企業規模や業種によっても賞与には大きな格差があるため、中小企業や特定の業種の企業に保険料負担が大きくのしかかるとも考えられます。
そのような不公平な状況にならないよう、賞与等からも雇用保険料は徴収し、失業手当の算定には含めないという現行の取り扱いになっているのです。